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2024年04月19日
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花神遊戯伝 外伝発売。

2015年05月14日
☆こんにちは。

☆遅くなってしまいましたが、ビーンズ文庫様より、「花神遊戯伝 きらめく星屑のかけらたち」発売です。(画像はAmazonさんリンク)

花神遊戯伝 きらめく星屑のかけらたち (角川ビーンズ文庫)

☆シリーズ最後の巻となります。
本書出版にあたり、お力添え下さった方々に深くお礼申し上げます。
担当者様、鳴海様、関係者の皆様、書店さん、どうもありがとうございます。

☆イラストは鳴海ゆきさま。
鳴海さまの花神を拝見できるのもこれで最後だと思うとしみじみです。
表紙になまずが…(笑)
思わず碁子の数をかぞえたくなります。
長髪胡汀の美しさにときめきます。そしてプチ神ズがかわいいです。
全巻、挿絵もとても丁寧に描いてくださって、いつもわくわくと拝見してました。
最後まで一緒にお仕事をさせていただけて嬉しかったです。およそ3年、どうもありがとうございました!


☆あらすじ。
既刊についていた特典ペーパーの一部を再録してますが、大半は書き下ろしかと思います。
掌編BOXの「緋剣と緋宮」と「うつろう季節」の中の『冬の日』以外がペーパーや公式サイトに掲載されていた小話で、あとは全部初出。

本編がシリアスだったので、ほっこりできる内容&本編に入れると流れが崩れるため断念していたあれこれを詰めました。
知夏達のその後だったり、本編中の小ネタだったり。
実はこの本、既刊より行数が多かったりします(ページ数がまた増えそうだったので……)
それで、最後の巻発売時には短編を…と考えていましたが、そちらは以前にビーンズ文庫公式サイト様に載せていただきました。で、それじゃあ花神の裏話を……と考えていましたら、こちらもありがたいことに、かつくら様にインタビューのお誘いをいただきましたので、そちらで色々と答えております(下記に画像リンクー!)。

かつくら vol.14 2015春

花神の他に、恋と悪魔やF等についての裏話的なコメントを書かせていただきました。
インタビューは初めてでしたので、嬉しい&光栄でした。
かつくら様から見本誌をいただいて、うおおお!となりました。ありがとうございました!
自分でも一冊買った…!


えへへ、花神にお付き合いくださった読者様に感謝です。
本当に楽しく書くことができました。多くの素敵作品の片隅にこそっとあるような拙い小説ですが、楽しんでいただけましたら嬉しいなー!

それで、『花神遊戯伝』掌編&この前発売されたアイリスさんの『六花爵と螺子の帝国』掌編を完結記念に書きました。
準備したのはかなり前だったのですが、多分まだブログに上げてない小話だと…
と、こんな感じで、ごく短いものですが、もしも「読むよ〜」と思ってくださった方は、折り畳んでいる記事をクリックでどうぞー!
(ちなみになぜか、未不嶺の話です)


☆そして、Fの台湾版を撮ってみました!写真、ちょっと暗くてすまぬ。
初の海外版ですー!嬉しいです。翻訳者さん、ありがとうございます。
通常版と並べて撮っています。右側が台湾版。
通常版と比べると、大きいです! 文字が恰好いい!
裏表紙の写真を取り忘れましたが、真っ赤で恰好いいです。
読んでくださる方がいたらいいなあ、とどきどきしてます。
(画像をクリックするともうちょっと大きめのサイズで見れます)




「恋と悪魔と黙示録 身代わり聖女と不思議なお茶会 」は6月20日発売予定です。
私の都合で延期となり、関係者の皆様には本当に申し訳ないです。
気合いを入れつつがんばります。

詳細は発売日あたりに。


☆花神外伝の巻末で予告を入れてくださったので、ここでもお知らせを。
ビーンズ文庫様から秋あたりに、『階段坂の魔法使い』という新作が発売予定です。
タイトルのまま、階段坂の魔法使いのお話です。
イラストは、山下ナナオさま。担当していただけて光栄です。
キャララフをいただきました!ヒロインかわいいです。
こちらも、詳細は後日に。
新作は楽しみですが、緊張します。

☆もうひとつ、she&sea3巻が夏頃に発売予定です。
おかげさまで3巻発売できることになりました。ありがとうございますー!
表紙は、2巻がヴィーだったので3巻はあの海賊です。
実はs&sも、文庫より行数が多かったりします。
今回、ページ数も少し増量です。2巻より多い気がする。
なにぶん、最初に書いてから何年も経っているので、書き下ろしと同じくらい修正に時間がかかっているという。

☆メールくださった方々、どうもありがとうございます。
お気遣いくださって感謝です。今回、私の都合でスケジュールがずれてしまったので、担当者様方には大変ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ない…
文庫を手に取ってくださり、とても嬉しいです。励みになります!



☆日常こぼれ話。
・現在、原稿を修正中ですが、「食材」という文字が「贖罪」になっていた……。
・書きたい話がいっぱいある。あれもこれも書きたくて手がうずうずする。資料は揃えたので、調子が戻ったらたくさん書くー!


◎六花爵と螺子の帝国……『純粋な会話』


 夕食後のことだ。
 アレクシアは、レンズの研究室にいた。
 日中の講義の他、ほぼ毎日レンズに直接勉強を見てもらっているのだ。
 学院に潜り込んでおよそ一ヶ月が過ぎたが、どの科目についても未だ基礎を学んでいる状態だ。時間は有限だが、学ぶことは無限にある。
 アレクシアの隣には、付き添いのジーンが座っている。彼は彼で、講義で出された課題に取り組んでいるようだった。
 珍しいこともあるもので、今日は一度も中身が入れ替わっていない。
 一時間ほど指導を受けたあとで短い休憩を取る。
 アレクシアは、勉強中ずっと気になっていたことをジーンに尋ねる決意をした。
「ジーン様、お聞きしたい事があるのですが」
「なんだ」
「その……私はなにか、非礼な振る舞いをしてしまったでしょうか?」
「なぜそんなことを訊く?」
「気分を害していらっしゃるように見えましたので」
 アレクシアはおずおずと言った。
 朝、会った時は普通だったように思う。ところが食堂で昼食をともにしてから、彼の様子がおかしくなった。不機嫌そうな顔をしているのだ。
「アレクシア、私もおまえに尋ねたいことがあるのだが、いいか」
「もちろんです、ジーン様。なんなりと」
「そうか。では訊くが、私とロキアスでは、どちらの肉体が好きなんだ?」
 近くの椅子に座って紅茶を飲んでいたレンズが、ジーンの言葉を聞いた瞬間、ごふっと噴き出した。アレクシアは慌てて布巾を彼に渡した。できれば今の質問は、なかったことにしたかった。
「アレクシア。答えないか」
(新手の拷問ですか)
「なぜ即答しない? まさか、おまえ……」
(むしろ即答したら変態です!)
 アレクシアは冷や汗をかいた。自分の人生で、どちらの男の肉体がいいかと選択を迫られる事態が訪れるとは、予想もしていなかった。
「ちょっと待たんか、ジーン! いきなりなぜそんな怪しい質問をアレクシアにするんだ?」
 レンズが慌てた様子で口を挟む。するとジーンは、眉間に深い皺を寄せた。この皺は、不快を示すものではなく、寂しさを示すものだ。表情豊かな皺である。
「今日、食堂でアレクシアは、友人の女たちと話していただろう。その時、ロキアスが恰好いいと言って頬を染めていた」
 アレクシアはきょとんとしたあとで、ああ! と納得した。
 食堂に入る前、具合が悪くなって通路に屈みこんでいた女子を、偶然通りかかったロキアスがさっと抱き上げ、医務室へ運んだのだ。アレクシアと友人のミーシャはちょうど彼の後ろを歩いていた。
 ジーンが食堂に現れたのは、ロキアスの話で盛り上がっていた時だ。ミーシャが、「さすがは帝爵! 恰好いい!」と言うので、アレクシアも頷いた。実際、ロキアスは格好よかった。軽々と女子を抱き上げたのだ。ミーシャ情報によると、ロキアスは文武両道らしい。剣の腕前は、一級騎士にも劣らぬとか。
 どうやらジーンは、その会話を聞いて胸をざわめかせたらしい。
(体力がないことを気にしているのかな)
 ジーンはレンズと同じで頭脳派だ。……運動方面は期待してはいけない。
「ロキアスの肉体が好きなのか」
 ジーンは無表情ながらも妙に必死な雰囲気で尋ねた。
 好きかどうかの前にまず、『肉体』から離れましょう、と答えたい。
「あいつの肉体に惑わされたのか?」
(誤解しか生まない言葉です、ジーン様!)
「おまえは誰の肉体でもいいというのか」
(まるで私が色魔のようです!)
 ジーンは答えを聞くまで逃がさない、という目つきをしている。
「わ、私はジーン様が一番です」
「本当か」
「はい」
「……だが腹筋は割れているほうが好きなのか?」
 どんな質問なのか。
 アレクシアは意識が遠のきそうになった。
 呆然としていたレンズが、ぼそっと「最近の子、大胆すぎて怖い」と呟いた。そして、ちらっと自分の腹部を見下ろし、気にした様子で軽くさする。……見なくてもわかる、間違いなくレンズも腹筋は割れていない。
  
 翌日、ジーンはロキアスに詰め寄り、「腹筋を見せろ。おまえを超えてやる」ととんでもない発言をした。
 なぜか、叱られたのはアレクシアだった。理不尽だ。

(終)



◎花神遊戯伝……『高貴なる王の影』 
 

 ——犬が、王になった。
 
 藤郎はその噂を毎日、耳にしている。
 今帝には信がない。血、武、才、どれをとっても半端である。そして若い。先の帝は奸悪な者であったが、君主の質を備えていた。しかしながら今帝にその輝きはまだあらわれぬ。臣下は目を伏せる事もせず、対等に口をきく。
 それではだめだ。
 王は友ではない。影さえ踏めぬと恐れる光。それこそが王なのだ。
 先代緋宮との誓いがあるゆえ、藤郎は今帝にかしずいている。だが影には影の矜持がある。
 影を踏ませる王は、悪。
 藤郎は何者にも踏まれるつもりはない。王の影とは、そういうものだ。この世で最も高貴な影だという自負がある。
 大樹が腐るというのなら切り倒さねばならない。
**
 藤郎は、欄干に手を置いて外を眺める志羅帝の背をひっそりと見遣った。
 先刻まで、志羅帝は議の間に一人きりであった。重臣が誰も姿を見せなかったのだ。
 それから儀の間を出て、見晴らしのよい亭へと足を運んだ。
「——藤郎」
 志羅帝が振り向いた。苦悩に満ちた顔をしているかと思いきや、穏やかな眼差しを向けられる。
「おまえは私の最も濃い影となるか?」
 彼の問いかけに、藤郎は軽く首を傾けた。不安なのか、それとも裏切るなと釘を刺しているのか。
 藤郎が答えずにいると、志羅帝は薄く笑った。
「犬の影になるのは嫌か」
「——緋宮を妃にされてはいかがか?」
 それでいくらか、臣下の離反は防げよう。
 力がないなら、つければいいのだ。
 つける時間がないというなら、奪えばいい。
 ところが志羅帝は首を横に振った。
「ならぬ。二廷がまとまるには早すぎる。時を待たねばならない。少なくとも私の代、私の子の代では無理だろう」
 二廷が結びつくのは、神なる力がもっと遠ざかった時代でなくてはならない。志羅帝は確信を込めてそう告げた。
「それに緋宮は、朝火の女王だ。奪ってはいけない……先代緋宮が彼を案じていたからな」
 志羅帝はおかしそうに言った。すぐに笑みを消し、藤郎を見つめる。
「おまえ、妻はいるか?」
「いえ、独り身でございます」
 女を囲う気はない。藤郎の関心は、生まれた時より王のみなのだ。
「では、すぐに持て」
 志羅帝は静かに命じた。
「十年待つ。妻を持ち、子をなせ。娘でなくてはならない。その娘が、私の正妃だ」
 藤郎はかすかに肩を揺らした。それを見逃さずに志羅帝は、感情を排した声で続ける。
「私はその十年の間に力を蓄える。犬と嗤われながらも、のらくらと。しばし臣下たちを肥えさせてやろう。国境に私兵を置いた者には埋もれるほどの金銀を振らせてやろう」
 志羅帝が、歩み寄ってきた。
 藤郎はとっさに、膝を床に落とした。その藤郎の顔を、志羅帝がゆったりと覗き込む。
 王が聞かせるのならば衣擦れの音さえ貴重なのだと、そういうカタリがあったのをふと思い出す。かつての帝に想いを寄せた貴人の女が作ったカタリだ。
「——存分に肥えた時、狩りをすればいいのだ」
「志羅帝」
 藤郎は、我に返った。繊細な顔立ちの青年に、ふいに『神なるもの』を見る。
(ああ、同じだ。これはあの、いつくし乙女と同じ苛烈な定めをゆく者なのだ)
 時代が動く。激動の歴に自分の生があり、そして誰より頂の近いところにいる。
(すばらしい。私よ、よくぞこの時代に生まれ落ちた)
 志羅帝は、藤郎の野心さえ飲みこむ目をして言う。
「そう、のらくらと、臣の私兵を使い、数年は戦にならぬよう隣国さえも騙してやろう。だが四年か、五年後か、いずれ血が降り注ぐ。それは避けられぬ。しかし血は、この蒸槻ではなく隣国の地に降らせねば」
 王の兵を育てよ、と志羅帝が命を下す。神力ではなく鉄の刃を握る兵だ、と。武は回絽廷、神は帰鼓廷、蒸槻は武神そのものの国なのだ。そう囁く。
「おまえは、闇より濃い私の影となるか?」
 藤郎は、一瞬だけ志羅帝を仰ぎ見た。
 美しい王だ。それでもはや、十分だった。
「ああ、返事はいらぬ。影とは、光から離れられぬものだろう」
 なんとも、よい言葉ではないか。
 王の影は、満足した。


(終)



※ここから、未不嶺についての裏話。

未不嶺はこれから『王』として生きます。意外にも(?)戦上手になります。かなり冷酷な策を立てて交戦します。
暴君一歩手前のとこまでいきますが、未不嶺の時代には蒸槻に敵を一歩も近寄らせず逆に領土を奪ったりと無双状態なので、批判も激しいけれど心酔する臣下も多いです。
藤郎の娘が、十一歳で未不嶺と結婚します(最初は形だけ)。藤郎は側室たちに男子を産ませないよう画策します。
という感じで結構泥沼な回絽廷ですが、未不嶺本人はひたすらに、知夏との誓いのためを果たすべく生きているので、ある意味純粋っ子です。基本生真面目のため、目標があると輝くタイプです。
ちなみにいずれ、未不嶺も天界へ渡ります(※戦で殺しすぎたので、人として生まれ変わることができません。でも生涯において野心に溺れなかったことが認められ、神格化する)


と、こんな裏設定がありました。
もう少し本編で登場させたかったキャラです。
他のキャラにも色々ありますが、長くなるので省略。


花神遊戯伝にお付き合いくださり、ありがとうございました。
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