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短編2弾目。

2013年05月27日
こんばんは。

★メールくださった方々、どうもありがとうございました。
小話にもご感想ありがとうございました。うへへ嬉しいです。

・サイト小説の更新は現在、すみませぬが、かなり不定期となっております。

・ありがとうございます、榊様イラスト、私もとてもときめきます!


★恋と悪魔2の発売記念短編第二弾。
本当は連続して公開しようと思っていたら、浴室のガスの調子が悪くなり、ばたばたとしていました。
この短編の内容は、先日の続きとなっています。
(なので、前回分をお読みでないと、わからぬ内容かと思われます)

読むよ〜、と思ってくださった方は、折り畳んでいる記事をクリックください。


★日常話。
まだまだキッチンマットが仕上がらぬ……これ、いつから編んでいるのか。
本も注文したいなー。机回りが本まみれになっているので、本棚がほしいです。
【午後と指輪と聖爵たち・その2】


 自分たちの神魔の美点を主張し合ううちに、通りを行き交う人々が振り返るほどの大仰な論争へと変わり、もはや一歩も引けなくなったときだった。
 レジナたちのいる通りに、カイナール教会の守護天使リストが現れた。
 彼は小汚いちっぽけな鳩をかかえていた。
 ぽるっぽー、という長閑な鳩の鳴き声で、火花を散らしていたレジナたちは我に返り、振り向いた。
「おまえたち、ここでなにをしている?」
 妖精のごとき清らかな容姿を持つリストが、レジナたちを見回して、やや戸惑いがちに尋ねた。
「あっ、リスト様。ラプラウ様も!」
 レジナは驚いた。この、どう見ても土鳩にしか思えぬ薄汚れた鳩の正体は、なにを隠そうネクシャベルト国の至高の神だ。
「主が、こちらの通りへ来たいとおっしゃるので足を運んでみたのだが。バリシオたちの気配を察しておられたのだな」
 リストの言葉に、鳩が彼の腕の中で嬉しそうに羽をぱたぱたさせた。そしてレジナのほうへ飛んでこようとしたときだ。
「女好きめ。こいつ、小動物の姿でいればお嬢さんにかわいがってもらえると知って、味をしめたな?」
 ヴィネトが腹立たしげに鳩の嘴を指先でつまんだ。鳩が悲しげに、くるる…と喉を鳴らした。
「いじめたらだめだよ。指を離してあげて、卿!」
「ヴィネト卿! 主に乱暴はよせ!」
 レジナとリストは同時に叱責の声を発した。
 リストと馴染みがないリウは、なにが起きているのかわからない様子だ。きょとんと……というか普段通りの無表情でこちらを見守っている。
 ヴィネトの魔の手から守るため、リストは鳩をしっかりと抱き直した。軽く彼を睨み、それからレジナに苦笑を向ける。
「なにか言い争っていたように見えたが……このヴィネト卿に不埒な行為でも強要されていたのか? もしそうなら、あとは私にまかせなさい。喜んで彼を罰しよう」
「い、いえ、違います!」
「こらリスト殿、俺を変態扱いするなっての」
「では、なにを口論していた? 男二人で、無垢な娘を責め立てていたように見えたが」
 紳士なリストは、『ヴィネトとリウの二人にレジナが虐げられていたのでは』と心配してくれたらしい。
「あのな、リスト殿。言いがかりはよしてほしいんだがね。責めていたのではなく、厳然たる事実ってやつをお嬢さんに教えていたんですよ」
「……なんの話だ?」
 怪訝そうな顔をするリストに、ヴィネトは精悍な面持ちで事情を説明した。『誰の神魔が、一番毛並みが美麗か』という問題についてを。
「なんてくだらない……」
 脱力しそうなリストに、ヴィネトとレジナは同時に、むっとした。
「失礼な。人にはどうしても譲れぬことがあるでしょうが」
「そうですよ! リスト様、聞いてください。わたしのアガル、最高ですよね!」
「……バリシオまで…」
「ちょっとお嬢さん、バレクの触り心地のほうがいいですって。それにあいつ、普段は比較的おとなしいんですよ。どこかの乙女な藻魔と違ってね」
 ヴィネトの優越感たっぷりな顔が憎らしい。
「……アガルはすごく利口だもの! 本も好きだし、素直だし」
 ぽかんとするリストを尻目に、レジナとヴィネトが再び火花を散らしたとき。
「……やはり私の双子が一番利口ではないか? 躾も行き届いているし、家事全般もこなす。手入れも行き届いており、獣型、人型ともに気品がある」
 リウが淡く勝ち誇った感をにじませてぽそりと呟いた。
 また三人のあいだで論争が白熱しそうな気配になった。
 それをとめようとしたのか、リストが慌てて口を挟んだ。
「わかった、もうどの神魔も同じくらい素晴らしいということでいいだろう?」
 ——リスト様、そんな大雑把に!
 不服そうな顔をするレジナたちに、リストは微妙に引きつつも、強引に話題を変えた。
「その、ところでだ。おまえたちは、この通りへ買い物に来たのか?」
 レジナたちは本来の目的を思い出し、はっと我に返った。
「そうだった。お嬢さんへの贈り物を買うために来たんでしたっけ」
「あ、それにわたし、複写本のためのインクを買いたかったんだ……。最近、物価が上がっているんですよね。冬季はインク代も値上がりするし」
 レジナはつい懐事情を思い返し、遠い目をした。教会在籍中であれば、インクや羊皮紙は特殊なものでない限り比較的自由に使用できたのだ。今はすべて、自分で調達せねばならない。
 男三人が、ちょっぴり複雑そうな目でレジナを見た。
 最初に口を開いたのはリストだった。
「……バリシオ、少し援助をしようか?」
「え? ……と、とんでもない!」
「そういえば神魔には金銀や宝石を作る能力に長けている者が多いと聞く。バリシオの神魔に宝石でも作らせて、売ってみたらどうだろう? 暮らしに困らずにすむのでは?」
「……!?」
 レジナは思わずリストを凝視した。
 ヴィネトまでもが深い衝撃を受けた顔でリストを見つめている。
「……なんだ二人とも、その顔は」
 レジナとヴィネトは、同時にリストからそっと視線をそらした。
「なんていうか俺……、聞いちゃいけないことを聞いた気分ですよ。いや、守護天使のリスト殿の口から、そういう狡猾な発言はあんまり聞きたくなかったっていうか。清らかなものは、ずっと俗世に染まらず清らかなままでいてほしいっていうんですかね」
「うん……」
「今の言葉を、俺が言うなら問題ない気がするんだが」
「うん、うん……」
「なんか……『大人って汚いよな』って思ってしまいましたよ、俺としたことが……」
「わたしも少しそう思った……」
 レジナたちは、同時に悲しみの吐息を落とした。思いも寄らぬ、むごい現実を見てしまった気分だ。
「……二人とも、そんな顔をするのはやめなさい」
 リストが動揺を隠し、しかめっ面でそう言った。
「……わたし! 今の聞かなかったことにしますから安心して、リスト様」
「いやあ、お嬢さん。声にして放った言葉と、失った愛ってのは、取り返しがつかないものって相場が決まってますよね」
「卿! 人生を悟ったようなことを言わないで!」
「……わかった、私が悪かった。失言だったから、二人とも、もう忘れてほしい」
 ここまでの流れを静かに見つめていたリウが、ふいにレジナの片手を取った。
「えっ? リウ様?」
「インク代にも欠くほど難儀していたとは気づかなかった。だが案じることはない。私がレジナの世話をしよう。私はあなたの身を預かったも同然の立場なのだから。今後、生活に不自由させることはしない」
「ええっ」
 ——リウ様、大真面目な顔でなんてことを! 
 あくまでリウは『朔使総帥として』、新米のレジナを保護してやろうと考えたのだろうが。
 レジナとリウの様子に、今度はリストとヴィネトが変な顔をした。
「……身を預かった…? バリシオ、そういえば彼はいったい何者だ? 神魔憑きということは聖爵なんだろうが、しかし……どういう関係なのか?」
「こら総帥殿。清潔そうな顔で、凄いことを言わないように。愛人宣言みたいに聞こえましたよ」
 今度はリストと、鳩の鳴き声もまじえ、往来で怪しい論争が始まった。

end.
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