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Xmas&発売記念な短編

★メリークリスマスです。

新刊にご感想くださった方々、ありがとうございました!
恋愛部分、甘酸っぱい感じをめざして書いた小説です。
アガルと、それからヴィネトにもお言葉いただけて嬉しいです。楽しんでいただけましたら、感激です。


ということで、「恋と悪魔と〜」発売記念な番外SSを書いてみました。
文庫についていた特典ペーパーA・Bが、それぞれアガル×レジナ、ヴィネト×レジナという内容だったので、この番外SSではリスト×レジナにしました。
ほのぼので、甘い感じです。
では、お読みいただける方は折り畳んでる記事をクリック。
(内容は、本編終了の直後です)
【天使とわたしと赤い心】

 アガルもヴィネトも不在の時刻。レジナは一人、滑車通りの隠れ家で聖沌書の書き写しの練習に勤しんでいた。
 そこに、古びた小型の木箱を抱えたリストが現れた。
「リスト様……? 卿に会いに来られたの? でも今、わたししかここにいないんです」
 レジナは戸惑いながら、リストを室内へ招き入れた。
「いや、あなたに用があった」
「わたし?」
 リストは抱えていた木製の小箱を食堂テーブルの上に置き、ローブのフードを外して微笑んだ。銀色の髪に碧眼。妖精と見紛うくらいの透き通った美しさだ。
「あ、なにか教会で問題が……?」
 なにせ魔女の烙印を押されたうえ、処刑場の沼からアガルとともに逃亡したのだ。
 巡婚が終わった今、指導官たちが捕縛に意欲的な姿勢を見せ始めたのかもしれない。レジナはそう考えて、憂鬱な気分になった。
「いや。そうではない。あなたに渡したいものがあったので」
 そう首を振って、リストは小箱の蓋を開けた。
「これ、腕輪? 随分たくさんありますね」
 レジナは驚きの声をあげた。古めかしいが、精緻を極めた飾りのある腕輪が箱のなかにいくつも入っている。
「へえ、どれも年代物ですね。でもよく手入れがされてて、かなり高級なものだと思……えっ? リスト様、なに!?」
 気難しい顔をしたリストが小箱なかから腕輪を取り出し、次々とレジナの手首にはめていく。
 レジナは目を白黒させた。やけに真剣なリストの様子を見れば、これは決して『男性が意中の女性に贈り物をする』といった甘い構図ではないとわかる。かといって、アガルのように奇抜な価値観で贈ろうとしているのでもないだろう。
 また、その真面目な性格上、ヴィネトのように悪戯心を発揮して、というのでもないはずだ。
「待ってください、リスト様。どうして腕輪をわたしにたくさんつけさせようとするの?」
「これらはみな、魔除けの腕輪だ」
「魔除け」
 思わぬ解答に、レジナは言葉を繰り返した。
「いいか、バリシオ。神魔と契約したのはいいが、それによって他の魔が騒ぎ、寄り集まってくるかもしれないんだ。神魔自体の魔力に正気が狂わされることもある。それに、ヴィネト卿など悪魔の申し子と同じではないか。そばにいれば、影響されかねない」
「……でも、卿は生きているあいだは人間って」
「あの男なら面白半分に、いつでも自身の命を捨てかねない」
 真顔での断言に、レジナは思わず笑顔を作った。
 ——確かにそうかも。卿は、楽しいことが最優先って感じだものね。
「笑い事ではないぞ。近くにいるあなたが一番、被害を被るだろう?」
「それで、わたしに腕輪を?」
 レジナは柔らかく微笑み、リストに掴まれたままの自身の手首を見下ろした。きらめく小さな宝石がはめこまれた、いくつもの腕輪。
 ——アガルからは指輪をもらって。リスト様からは腕輪かあ。贈る理由は、世間の感覚からちょっとズレているけれど、やっぱり嬉しいな。
「リスト様、ありがとう」
 レジナは素直に礼をのべた。
 ふと、リストが目を瞬かせる。それから、困ったようにぎこちなくレジナの手首から指を離した。
「……すまない。これは、その……誤解させただろうか?」
 レジナはきょとんとした。
 ——誤解? もしかして「リスト様から異性として純粋に好意を寄せられた」ってわたしが勘違いしてるかもしれないと危ぶんだのかな。
 そう思い至った瞬間、レジナは頬が熱くなった。
 ——そ、そういうつもりでお礼を言ったんじゃないんだけれど。わたし、はしゃぎすぎた?
 恥ずかしさが募り、レジナは一歩後退した。
「だ、大丈夫です、わかってます。ごめんなさい。なにかを期待したとかじゃなくて」
 レジナは赤く染まった頬をおさえ、しどろもどろに言った。
 ——わたしのばか、こんな態度をとったらますます『贈り物の意味』を誤解して喜んでいたみたいじゃないか!
 焦れば焦るほど挙動不審になってしまい、レジナはもう逃げ出したい気持ちになった。心臓までどきどきと激しく鼓動し始める。
「あの、リスト様が親切で魔除けの腕輪を持ってきてくれたんだって、わたし、わかってます」
「ああ」
「それで、そのお気持ちが嬉しかったの。心があたたかくなって、ええと、優しくしてくださることに舞い上がっただけで、本当に変な想像をしたわけじゃ」
 言えば言うほど弁解じみて聞こえるのはなぜなのか。レジナは深く俯いた。
「いや。私が迂闊だったし、不用意なことを言ってしまったようだ」
「い、いえ」
 リストが生真面目に謝罪した。
「バリシオが誤解していないとわかっているが。ただ、そんな表情で喜んでもらえるなら、普通の贈り物にするべきだったのでは、と思ったんだ」
「え……?」
 ちょっと見つめ合ってしまった。
 ——今のは、ええと、どういう意味だろう?
 リスト本人も、自分の発言に「はて?」と一瞬、疑問を感じたらしい。
「わたし、そんなに物欲しそうな顔をしたんでしょうか?」
 レジナはおずおずと尋ねた。
「そうではなく、女性というのは本当に花のように笑うものだと」
 言葉の途中でリストは、ぱっと片手で口元を覆い、横を向いた。
「……すまない。これも、不用意な発言だった」
「だ、大丈夫です。誤解してません!」
 素早く答えつつも「あれ?」とレジナは内心、首を傾げた。
 ——わたしを笑わせるために、普通の贈り物をしたいって意味に聞こえるけど……。
 男性というのは、まったく興味のない相手でもとことん喜ばせたいと思うのだろうか。
「バリシオ。頼むから、そうまで赤くなるな。つられる」
「は、はい。すみません……。え?」
 レジナは思わず、リストの顔を凝視した。白い頬がわずかに色づいているのがわかった。彼のこういった、淡く艶のにじむ表情を目にしたのは初めてで、どきりとする。
「見てはならない」
「……はい」
 重々しい口調で言われたので、レジナもまた大真面目にうなずいた。
 そして二人、しばらくのあいだ互いにそっぽを向き、顔の火照りをごまかした。


・終・
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