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2024年04月27日
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こんにちは

2014年05月18日
こんにちは。
一ヶ月経つのが早いです。

☆メールくださった方々、どうもありがとうございました。
新刊やサイト小説のご感想、どれも嬉しく読ませていただいてます。丁寧なお言葉をくださったり、絶叫系でくださったり、顔が緩みます。
お手紙くださった方も、ありがとうございました。
たくさん小説を書きたいです。


いくつかにプチレス。

・あっ、紛らわしい書き方をしてしまいすみません!4巻、その曜日の仕掛けのことです。
ちなみに2巻はその二つの他にもう一カ所、地味にあったりします。(ただし、本編とはなんの関係もない遊び部分の簡単な仕掛けであります)

・うへへ、獣ラブー!

・二重買い、あるある……(この間自分も同じことをしました)

・サイト開設おめでとうございますv 小説を書くのは楽しいですよね!

・現在、すみませんがサイトの更新がとても遅くなっています。



★恋と悪魔と黙示録の4巻の発売記念ということで、恒例(?)の短編です。
思いの外長くなってしまった気がします。
レジナとマチェラの手紙形式な話です。コメディ的な感じです。女の子同士の話を書くのはとても楽しい。
読むよ〜、と思ってくださった方は、折り畳んでいる記事をクリックくださいませ。

【彼女と彼女の文通録】
※この小ネタは、とくに3巻と4巻をお読みでないとキャラや流れがわからないかと思います。
※主人公レジナとティアティ国のマチェラ姫は文通友達です。このあたりは4巻の前半に説明有り(マチェラの登場自体は3巻。夫はドラームという将軍です)。



◎××月××日 親愛なるレジナへ

先日は素敵な書物と手紙をありがとう。あなたの親切に感謝するわ、神の祝福がありますように!
……ってそれどころじゃないのよ、聞いてレジナ!
ドラーム様ったらなんなの! 本当なんなの!? 
一日中私を膝に乗せて、離してくれないのよ。「あなたから口付けしてくれたら自由にしてあげる」ですって。
私からしたことがないのが不満らしいの。
ねえレジナ。私にそんな勇気と大胆さと色香と積極性と手管があると思う?
それに……ドラーム様はあの通り素敵な殿方ですから、私と結婚する前は、ええ、それはもう華やかに遊んでいらしたもの。
同じ真似を他の女性にもしたのかしらと思ったらだんだん悲しくなってきて、私、どうしてもできませんでした。
お付き合いのあった女性達と比べられるのが怖くて、今でも私からは触れることさえできないの。
とうとう夜が来るまでなにも言えず、ただじっとドラーム様の膝上にいたわ。
私って馬鹿ね、こんなにかわいげがない妻はいつか見捨てられてしまう。



◎××月××日 わたしの美しい友人へ

言葉で触れることも、手で触れることもできないというお気持ちはわかります。
ですので姫様、少しずつ心で触れるというのはいかがでしょう? 
以前に、寝室もまだ別とお聞きしました。
それなら、ドラーム様の枕元に、愛の言葉をしたためた手紙を日々置くのです。
といっても、大陸レレスの共通聖語やティアティ国の言葉ではなく、すぐには読み解けないような珍かな言語で。
たとえば、二百年前にわずか三十年で滅んだムハジュの民の言語とか。旧神話の特殊記号とか。
これなら自国語より抵抗なくしたためられるでしょう?
こうやって愛の言葉を書くことに慣れていき、そしていつかティアティの言葉で記してください。
**
追伸:ムハジュ国の言語を解説した参考文書をお贈りしますね。それから他の特殊言語の資料も。



◎××月××日 賢き友人たるレジナへ

私、頑張ったわ!
ムハジュの言語で手紙を書きました。こんな内容よ。
**
「ドラーム様はとても勇敢で頼もしくてお強くて顔貌も凛々しい世界一魅力的な夫です。
かつての時間は他の女性たちのものですが、これからはどうか私を見て。ご存じの通り、あなたの妻は頑固者ですから、この愛もきっと頑固ね。だから百年たっても割れないし、頑丈よ。
ええ、今はまだ、手触りも見た目も石のように硬くて武骨な愛ですけれど、あなたが毎日口付けしてくださったらきっと、薔薇石のように美しく変わるわ。
ねえ愛する方、私をどうか磨いてくれる?」
**
そうしたらドラーム様は、真夜中に私の寝室の扉を蹴飛ばして入って来たの。
手紙をさっそく解読したのですって!
でも正直、すごい勢いで寝室に飛び込んでいらしたから、最初は盗賊の襲撃かと思って悲鳴を上げたわ……。
素敵な口付けを雨のように落としてくださって、うっとりしたのよ。
あぁどうしよう、いよいよ愛する夫と結ばれる時が!もっと色っぽい夜着を着ていればよかった、とか、化粧や香水も使っていれば……とか、色々考える途中でふと疑問が生まれたの。
私、ムハジュ言語を組み立てて手紙を書くのに丸一日を費やしたのよ。
レジナが送ってくれた資料、これってひょっとして禁書の類いよね。いったいどこで入手……いえ、今はその話じゃなくて。資料自体がとても貴重なもので市にも出回っていないわ。
なのに、ドラーム様はどうやって一日もかけずに解読したのだろう、って。
……俄然気になってそれを尋ねたら、目を泳がせたの。怪しい……!
力尽くで聞き出したわ、私。
ねえ、信じられる!? ドラーム様ったら手紙を発見した直後、ロアス兄様に協力を頼んで王都に馬を走らせ、宮廷魔術師と書記官たち全員を叩き起こして言語を調べさせたのよ! ドラーム様があんまり血相を変えていたから、お父様まで何事かと起き出して、皆で顔を突き合わせて解読したっていうの!!
そうよ、『対立国に潜らせている密偵から送られてきた貴重な報せなのか?』と固唾を飲む全員の前で、あの文章を読み上げられたの……!
もう私、恥ずかしくて都に戻れないわ!! 明日まで生きていられる自信がない! きっと王宮中にあの文章が広まっているのよ!
なのにドラーム様ったら幸せそうにずっとにやにやしっぱなしなんだもの!
どうしてくれるのレジナ!
**
追伸:でもレジナ、ありがとう。ドラーム様がこんなに笑ってくださったのは初めてよ。



◎××月××日 一夜にして有名になられた愛の達人たる姫様へ

ロアス様や書記官たちまで動かされたとは、さすがは天下の将軍ドラーム様です。
ところで、お父様、といいますと、つまりティアティ国の王……いえ、なんでもありません。
お役に立てたのならこんなに嬉しいことはありません。……お役に立てた、と信じたいです。
ねえ姫様、わたしのアガルが今日も可愛すぎてつらい……、「レジナと同じ髪になる!」と突然凛々しく宣言して、髪を黒く染め出したんです。そして髪型もわたしと同じように左右にわけたんですよ。微笑むアガルは天使でした。
でも女性のわたしよりアガルはきれいなので、ちょっとだけ複雑な気持ちです。



◎××月××日 私を一晩で『女誑しさえめろめろにする危険な人妻』に変えてくれたムゴイ友へ

今日、ロアス兄様が離宮にいらしたの。
私の顔を見るなり、ぷっと噴き出し、肩を揺らして笑ったわ……
昼にはお父様までがいらして、大笑いしたのよ。私がしたためたあの手紙を額縁に入れて寝室に飾るっておっしゃったわ。ねえ私、戦慄がとまらないの……。
夕方には都の姫たちが押し寄せてきて、『男の愛を勝ち取る方法』を伝授してほしいって懇願されたわ。
これって私……王宮どころか都中で噂になっているんじゃないかしらと、本当に寒気がとまらないわ…
**
追伸:私の記憶が確かなら、あなたの恋人はものすごく美しい殿方だったわね。私のドラーム様も天使率高いですけど!
なにはともあれ、負けてはだめよ、レジナ。あなたってば今もきっと色気のない無粋な恰好をしているに違いないわ。
先日都に訪れた、とある不思議な魔術師から異国の書物を購ったの。
なんでも、この書物は世にあるすべての愛の形が記されているのだとか。購ったはいいものの、いざ目を通しますと、とても正視できぬあれそれが描かれていたのでドラーム様に見つかる前に処分……いえ、ぜひあなたに贈らせていただくわ。なにかの参考になるかもしれないし!



◎××月××日 真面目なわたしを『変態』と呼ばれるハレンチ娘に変えてくださった姫様へ

姫様! なんていう本を贈ってこられたんですか、『愛の聖典・第三幕』って! 
贈ってくださった荷を受け取ったのは、その時ちょうど屋敷に来てくださっていたヴィネト卿だったんですよ!
おまけに今、わたしの屋敷には、天使のように清らかな教会の兄使徒まで滞在中ですし、アガルなんて咲き初めの花のように清麗で純粋で恥ずかしがり屋で無垢な乙女属性の恋人なんです。
そんな彼らの前で解き放たれたこの衝撃の書物。『世にあるすべての愛の形が記されている』ではなく『世にあるすべての欲望の形がこれでもかと淫らに記されている』の間違いです。男女の、その、閨事の絵図……。
わたしは気絶どころか魂が昇華しそうになりました。
かつてこれほどの羞恥と絶望と恐怖を感じたことがあるでしょうか。いえ、ありません。
あ、魂が抜けたな……、って自分でもわかりました。
楽しいことが大好きなヴィネト卿でさえ凍り付きました。あぁ、忘れられません! 卿の『え……これって、ネタにして笑い飛ばしていいの? お嬢さんの見ちゃいけない秘密だった?』という申し訳なさそうな眼差し!! いたたまれない!
アガルは顔を真っ赤にして泣き始め、『レジナの変態!!』と叫んで屋敷を飛び出しました。
かわいいアガルから「変態」って……。
あ、これわたし消滅する……、と本気で思いました。
なによりも!!
兄使徒の方が!(リスト様、という方です。今度ぜひリスト様を紹介させてくださいね)
リスト様のあんなに衝撃を受けた壮絶な顔を目にしたのは初めてです。言葉では言い表せません。
その後リスト様と明け方までひたすら聖典を暗唱するはめになりました。リスト様は怒りもせず、ただ切々とわたしを思って真摯に指導してくださり……それがむしろわたしの絶望感を倍増してくれました。
さらには『もう一度教会に戻らないか? 誘惑は誰の身にも起こりうる。しかして堕落とは、神の試練である。なあバリシオ、私も決しておまえの手を離さぬから、ぜひ』と、ええ、心をこめて案じてくださいました。
その時わたしの胸によぎったのは、ほくそ笑む姫様のお姿です。まさかこうなる展開をお読みになってこの愛の聖典を贈っ……いえ、わたしの美しい友を信じます!
**
追伸:この書物事件以来、リスト様や卿がたくさんの詩篇や時祷書を贈ってくださるようになりました。嬉しいですが、複雑です……。



◎××月××日 変態……いえ、心善き親愛なるレジナへ

もしもあなたが恋人とお別れしたら、いつでもティアティにいらっしゃい。
私はまだ、あなたを義妹にすることを諦めていないわ。私のまわりでレジナほど書物に耽溺する喜びを分かち合ってくれる友はいないんですもの。
先日も、百冊ほど異国から手に入れたの。新進気鋭の作家の書よ。ほら、ティアティに来たくなったでしょう!
でもドラーム様は、レジナの来訪を恐れているのよね……。
私たちが集まると、自分が構ってもらえなくなるからですって。
この間もドラーム様から、「私の妻は『書物>>>>越えられない壁>>夫』なんだろう?」って拗ねられたのよ。
ドラーム様って本当にかわいい人だわ。でも書は読む!



◎××月××日 書物の誘惑でわたしを陥落する危険な姫様へ

わたしの住んでいるリシュル地区もいい所ですよ。
姫様の大好きな画具の店がずらっとあります! 上質な水牛の筆が手に入りましたので、贈らせてもらいますね。気に入っていただけるといいのですけれど。
わたしのアガルは書も好きです。先日、わたしのために娯楽本を朗読をしてくれました。
午後の光が差し込む窓辺で、頬を染めて照れながらも美声を聞かせてくれるアガル……天使でした、天使がわたしの前にいました!!



◎××月××日 画具で私を陥落する手強い友へ

う、羨ましくなんてないんだから!
ところで水牛の細筆、嬉しいわ! リシュル地区の職人はすごいのね、王宮でも卸せる品だわ。ティアティは物が集まる国ですが、物を作ることにはあまり向いていないの。
そういえばリシュルは香り草の類いもよいのよね。ロアス兄様が興味を示していました。もう少し交易品の種類を広げたいそうよ!
でもドラーム様にはちょっと引かれてしまったわ。
『ご兄妹で、そこまで絵筆に興奮されるのか?』って。まあ、私と兄様では熱中するところが違いますけれど、絵筆選びは重要なことよね!
そうだわ、レジナの恋人は朗読してくれる……という話をドラーム様にしました。
そうしたら私の素敵な旦那様も、ムキになって朗読してくれたの。なんと膝枕付きで……!!
月光の差し込む美しい夜、私の頭を撫でながら超美声で朗読してくださったドラーム様。
なにこの方、もしかして天から降りてこられた愛の美神?

追伸:ロアス兄様がヴィネト卿と貿易品に関する商談をしたいそうよ。それで、近々リシュルへ訪れる予定なの。
私もこっそりついていこうと思うわ。ドラーム様には内緒で。その時、会いましょうね!




 ——……
 ——屋敷の近くに立つ木の下、のほほんと寝そべるヴィネトやリスト、気がつけば鳩を頭に乗せている獣型アガルのとなりでレジナがこの手紙を読み終わり、微笑んだ時だった。
 こちらへ向かってくる華やかな旅の一団が目にとまった。
 レジナは笑みを深め、彼らへと駆け出した。

 再会を喜ぶ少女たちを眺めながら、ヴィネトがなんとも言えぬ顔をした。
「いや、なにがすごいってお嬢さんたちの手紙をせっせと運んでいるのが、ラプラウってことだよな……」
「な、なんだって?」
 ヴィネトの呟きを耳にしたリストが、愕然とアガルの頭の上を見た。
 そこで気持ち良さそうにうとうとしていた灰色のちっぽけな鳩が、リストの視線にびくっとした。
 鳩は気まずげに、ソッとリストから目を逸らした。
 ヴィネトとリストの脳裏に、可愛い少女二人にちやほやされて大いにデレる鳩神の姿がよぎった。
「……信仰って、なんだろうな」
「やめてくれ、ヴィネト卿」
「つまりあれか? 乙女たちに勝る武器はなし、というか」
「……主はきっと自らの御姿で、欲望と戦うことの重要性を我らに語りかけ……」
「悪かったリスト殿。涙出てくるからもうなにも言わないでくれ」
 黙り込む男たちの耳に、少女たちのきゃっきゃとした声が届いた。

(終)
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