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こんにちは

2008年03月05日
メールありがとうございました。ご感想等嬉しく拝見してます。
 
 
 
突然ですが、Fの小話を以下に。
多分、この小話はMEMOに載せるのは初めてだと思います。本編のどこかに組み込もうと考えていたんですが、内容のアホさというかほのぼのさを見て、現在シリアスまっただ中なために入れようがないと却下したものです。
というわけで、ここでこっそり公開(本編Fを読まれていないと全く分からぬ内容です)。

 エルって本当にいい子だなあと思う。
 私が寒そうにしていたらすぐに尻尾でくるんでくれるし、疲れた時には寄りかからせてくれるし。ご主人様のオーリーンにもこんな感じだったのかな。きっと仲のいいコンビだったんじゃないかなあ。
 私はふと忍び笑いをもらした。
 ちなみに今、私たちは神殿の隠し部屋で休憩中だ。見張り番の騎士以外の人たちが、そろそろ休もうかという動きを見せ、毛布を用意し始めている。
 私はちらっとエルの方に視線を向けた。エルは大抵私のそばにいるんだけれど、今は一人遊びに夢中らしく、床石に走っているひび割れの跡を熱心に鼻先で追っていた。 でも、賢いエルは視線の動きに敏感だから、私が眺めていることにすぐ気づいて、ふっと顔を上げた。その直後、ぱたぱたぱたっとちぎれそうなくらい勢いよく尻尾を振り、丸い目を嬉しげに輝かせながらこっちに近づいてきて、ちょっと湿った鼻を頬に押し付けてくる。
 可愛いなあ。
 そわそわと足踏みするようにして甘える姿勢を精一杯見せるエルに、幸せな微笑みが漏れた。顔を撫でてあげると、嬉しさ倍増という感じで毛を膨らませ、私の肩に耳をこすりつけてくる。
「エルは可愛い」
 そう言うと、言葉が分かるらしきエルは、照れくささがどうにも募ってたまらなくなったのか、きゅうっと鳴いて丸くなった。
「響? あなたももう休まれた方が……………聖獣の毛がやけに膨らんでませんか」
 毛布を持ってきてくれたリュイの動きがとまり、なんとも形容しがたい微妙な表情を見せた。
「エルって可愛いよね〜」
「………………そうですか」
 かなりの間のあとでようやく発されたリュイの声は、浮かべている表情以上に複雑な色が乗っていた。
 リュイ、エルのこと苦手なのかな?
 ちょっぴり寂しくなりつつ見つめると、リュイは少し焦った顔をして頭をかき、それから私の前に腰を下ろした。持っていた毛布は、私の脇に置かれた。
「愛らしいというよりも、神の獣は気高いものですから………………通常の場合は」
「エル、リュイが気高いって褒めてくれたよ、よかったね!」
「きゅん…(注:エルの鳴き声)」
 私はうっとりとエルを見つめた。
「私思うんだけれど、もしエルが人の姿になったら、すっごく格好いいんじゃないかな」
 リュイがなぜか絶句した。
「きっとオーリーンみたいに大きくて美形さんだと思うんだ」
「きゅう…(エルの鳴き声)」
 私たちの近くで術書を読んでいたイルファイが、どうやらこっちの話をなんとはなしに聞いていたらしく、怪訝な顔を見せた。「女心というものは…」なんて独白して首を振っている。どういう意味かな、イルファイ。
「あ、もしかして、筋骨隆々タイプじゃなくて、率帝みたいに聡明そうな綺麗系かなあ」
 と、しきりに照れているエルを横目でとらえつつ想像した時、これまた近くでなんとなく話を聞いていたらしいディルカが急に顔を強張らせ、きょとんとしていた率帝を背に隠した。な、なんで?
 うーん、やっぱりエルはオーリーン系か。
「いいなあ、エル」
 羨望をこめて呟いたら、それまで絶句していたリュイが目を瞬かせ、恐る恐るという感じで「何がですか」と聞いてきた。
「だってエルって強そうでしょう? 私……この神力で変身とかできないかな」
 思い切って内心の願いを口にした瞬間、どうしてか空気が凍った。皆、さっきから反応が変だ。
「エルみたいに強そうな聖獣になりたいって思…」
 言葉の途中で、話を聞いていた皆がぎょっとし、半腰になった。私はびっくりして、ちょっと身を引いてしまった。
「お前、一体どんな悪夢を作る気なんだ。これ以上皆の絶望を呼ぶな」
「イルファイ? なんで怒っているの?」
「冗談だと言え」
「え、え?」
「本気か? 本気でこの獣のようになりたいと思っているのか」
「わ!」
 凄い剣幕でイルファイに詰め寄られ、尚かつ肩を揺さぶられた。なんで!
「響……頼むから、それだけは…」とリュイにまで頭が痛そうな顔をされてしまう。
「で、でも皆だって、強そうな外見の方が安心できると思うし…」
「恐ろしいことを言うな。戦慄が走ったではないか」
 なんでイルファイ、そんなに真顔で怒っているんだろう。
「それにエルって、強そうだけどこんなに可愛いし」
 私が拳を作って力強く主張すると、エルがきゅうん、と甘えるように鳴いた。うう、可愛い。
 がしがしがしと勢いよく自分の髪の毛をかきむしったイルファイが、突然リュイを睨み上げた。
「月迦将軍、一体この娘にいかなる教育をほどこした」
「…………いや、私は彼女の保護者ではないのだが」
 なんでそこで、バトルが始まっているの!
 もう、困った人たちだなあ、と溜息をつき、同意を求めて率帝を見たら、なぜかすごく残念そうな目をされた。
「響様……できれば、そのままのお姿で…」
 率帝の言葉に、たじたじになっていたリュイから手を離したイルファイが恐い顔でこっちに向き直った。
「そうだ、ただでさえ艶に欠ける姿というのに、獣になど変われば最早目も当てられ……」
 イルファイが全部言い切る前に、リュイが咄嗟という動きで、どすっと彼の脇腹に肘をいれた。うわぁ、いい音がした。痛そう…。というか、艶に欠ける姿って、何!
 感情が悪化し始めた私を、どうしてだか、イルファイを除く全員が凄い丁寧に慰めてくれたんだけれど。
 すっごく納得いかない気がするのは、なんでだろう。
 私は内心でぶつぶつ零しつつ、ふて寝した。

●END●

とりあえず、エルは恰好いい美獣だと本気で信じているヒロイン。
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